
「隠岐」と聞いて、どんな場所を想像するだろうか。
地図の隅に小さく存在するその島々は、決して近いとは言えない。日本の大地から飛び出し、海を越え、時間をかけて辿り着く。
その旅路こそ、旅をさらに特別なものに変えていく。
第2回目となる今回は、隠岐を訪ねた3名のクリエイターの声をジャーナリング。
"時間"がここにある、ということを感じながら過ごす旅
山口達也
Tatsuya Yamaguchi
深呼吸してもらうための音楽を作る音楽家
山口達也
Tatsuya Yamaguchi
深呼吸してもらうための音楽を作る音楽家
隠岐への旅は、飛行機を2回、フェリーを1回乗り継ぐ道のりだった。船を待つ時間は1時間、船での移動はさらに1時間。
その間、無限に広がる空と海の間で、「時間がここにある」と感じながら過ごした。

時短が求められる今の世の中で、ふと昔、珈琲屋の店主が教えてくれた言葉を思い出した。
「ものごとには本来かけるべき時間がそれぞれにある。コーヒーをドリップするには、必ず3分かかるんだよ」と。
隠岐への旅でも、その言葉がずっと頭を巡った。
音楽家として、隠岐をテーマにした曲を作っていたが、道中の余白のある時間が、曲を良い方向に導いてくれた。
島に着いてからも、その時間は続いた。何かを感じたり考えたりするために本来必要な時間を、島が与えてくれたから。
余裕を持った時間が、心を震わせるほど多くのことを感じさせてくれた。
船に乗り、広い日本海を眺め、まだ見ぬ隠岐の地へ思いを馳せる

湯淺昌子
Shoko Yuasa
𝘎𝘙𝘐𝘐𝘐𝘹で日々のことと山と旅の記録をしている。
湯淺昌子
Shoko Yuasa
𝘎𝘙𝘐𝘐𝘐𝘹で日々のことと山と旅の記録をしている。
広い海を見ながら、写真を撮ったり、ぼーっと座って過ごしたり。
自然の中に身を置くことが好きな私には、まさに最高のひとときだった。
穏やかとはいえない日本海をぐんぐん進む隠岐汽船の力強さが、とてもかっこよかった。

船から見た景色と過ごした時間すべてが印象的で、今でも鮮明に覚えている。
思い返すと、隠岐の景色や空気が恋しくなる。

目的地への移動時間こそが、物語の導入部のようなものだと思う。
船に乗り、広い日本海を眺め、まだ見ぬ隠岐の地へ思いを馳せる。
どんな景色や出来事が待っているのかワクワクしていた。

その時間が、日常から心を解放し、隠岐での体験をさらに感動的にしてくれた。
アクセスの悪さや移動の長さこそが、旅の大切な一部分ではないだろうか。

幸先が悪いように思えた旅の始まりが、最高のスタートに
河野涼
Ryo Kawano
クリエイティブプロダクション hyogen 代表
河野涼
Ryo Kawano
クリエイティブプロダクション hyogen 代表
隠岐行きのフェリーが突然欠便に。
前日の連絡で急遽チャーター便に変更。隠岐空港からフェリー乗り場へ向かうタクシーの運転手はメーターを止めて、近くの公園まで案内してくれた。
海士町に到着する前に、人の優しさと予期せぬ大自然に出合い、心が温かくなった。


チャーター便に乗ると他にも乗客がいて、結果的に安く乗れた。予期せぬことが起こっても、いい出来事がバランスを取ってくれているようだ。
幸先が悪いと思った旅が、結局、最高のスタートになった。

ありすぎることは、有り余ること。
便利な現代では、何でも手に入るけれど、その便利さに慣れすぎて、忘れてしまう感情がある。
想定通りにはいかない旅路が、日常のありがたさを思い出させてくれた。


港までは長旅、着いたらすぐそば。
Entôまでは、決してアクセスが良いとは言えません。船に必ず乗る必要もあります。飛行機でどこでも快適に移動できる時代、着くまでも旅。
到着までにかかる時間、緩やかに移ろい変わる風景を眺める時間も含めて、Entô時間と捉えていただければ幸いです。
最寄りの菱浦港に着くまでは長旅ですが、港からEntôは徒歩約3分です。
Access──島への行き方はこちら